
スケートパーク「The Yago」と、ワークブランド「TryAnt」の共同開発による、タフでスタイリッシュなスケートボードシューズ『BUG BLUE(バグ ブルー)』。
The Yago代表 馬場氏と、TryAnt代表 北山氏が語る、究極のスケシューへのこだわり。

〈 BUG BLUE誕生の経緯 〉
馬場:
北山さんとは、ある共通の知人の紹介で知り合ったんですよね。
Yagoの近くでワークシューズを作られているという話を聞いて、スケートボード用のシューズも作れるんじゃないかって。
それまで自分でスケートシューズを作ろうなんて夢にも思ってなかったのですが、彼の話を聞いて、彼とだったら作れるかもしれないって思いました。
北山:
私達は、ワーカーに向けたセーフティースニーカーが専門で、これまでスポーツシューズは作った事がなかったので、馬場さんと話してぜひやってみたいと思いました。
安全靴業界って、あまり他業界に出ていく事がなくて。新しい事に挑戦してみたいという気持ちが強かったですね。
〈 思い描いていたシューズとは? 〉
馬場:
シンプルでスタイリッシュなデザインで、スケートボードに必要な柔軟性と耐久性、グリップ力に優れた靴が、僕の理想のスケートシューズです。
北山さんと作ったこの靴がまさにそれです。
自分がこれまで26年間スケートを続けてきた経験から、ベストを捻り出しました。
北山さんと打ち合わせを重ねる中で、僕の要望が却下された事ってないんですよ。
すごく細かいディテールまでお付き合いいただき、何個も何個も試作を作っていただいて・・・。
自分ではかなり納得のいく素晴らしい靴が出来たと思っています。

〈 開発にあたり重要視した事 〉
馬場:
一番は、自分が履きたくなるような靴ですね。
スケートしやすいというのはもちろんですが、それよりも「カッコいい」というのはすごく大事だと思うんです。
スケボーを始めた人達って、皆さんカッコよくなりたくて始めてるんですよ。
自分をより良く見せたいとか、新しい自分になりたいとか。
スケボーを続ける中で、そんな気持ちは不可欠ですから、やはり「カッコいい」というのは一番こだわりたいところでした。
で、みんなにとってのそれと、自分にとってのそれは、なるべくイコールになる様に。
結果かなりシンプルなデザインになりましたが、どの世代の人にも受け入れられる一足になったと思います。
北山:
私にとっては、今回馬場さんの「カッコよさ」へのこだわりはすごくレベルが高く、その情熱に驚きましたね。
ワークシューズって、人や現場によっては、そもそも「カッコいい」から始まっていなくて、仕事してるから仕方なく履くみたいなところがあるじゃないですか。
もちろん「カッコよさ」は大事ですが、まずは「安全」とか「価格」を重視して、デザインなどは少し我慢する場合があると思います。
でも、まずは見た目のカッコよさという部分で、ここまでやるんだってぐらいのこだわりを聞いて、
しかもその「カッコよさ」の中に、フィット感・使いやすさなど、スケートシューズに必要な機能性も盛り込まれている事に驚かされました。
私はそのプロの意見を再現しながら、なるべくコストを抑えて耐久性を上げるという、ワークの特性を活かせればと思って取り組んでいました。


〈 耐久性へのこだわり 〉
馬場:
これまでは気に入っているスケートシューズがあって、9年ぐらい同じモデルを履き潰しては買い替えてを繰り返していました。
それぐらい履き心地が良かったんですけど、靴紐が切れやすい事だけが難点でした。
スケーターって、みんな紐が切れる前提で靴を履いていて、新品の状態で紐にアロンアルファを染み込ませて固めたりだとか、一日でも長く履けるように対策するんですよ。
紐が切れないようなデザインの靴を履いた事もありますが、そういうのって大体つま先まで紐が通ってない物が多くて。
紐がない分、履いてるとつま先が柔らかくなって、フィット感がどんどん無くなるんですよね。
ずっと長く足にフィットさせるには、やはり紐を先端まで通して閉める必要がありますし、対策としてシューレースガードが付いた靴もあるんですけど、バッシュみたいにデカかったりゴツかったりで、自分の好みに合わなくて。
細くてスタイリッシュなデザインで、靴紐が先端まで通って、紐が切れにくい靴が今まで存在しなかったので、何でないんだろう?と思っていました。
BUG BLUEは、オーリーガードに本革を貼ることで、紐だけでなくアッパー全体をガード出来る仕様になっています。
皆さん穴が開くと、シューグーを塗ったり、別のスエードを貼って補強するのですが、普段2ヶ月で穴が空いてしまう僕でも、BUG BLUEは補修なしで4ヶ月間使い切れたので、耐久性は他のシューズに比べて群を抜いていると思います。
最新のテクノロジーを用いた靴はいっぱいありますが、これだけシンプルな作りなのに紐が切れにくくて、穴が開かないっていうのは、本当に素晴らしいと思います。

〈 グリップへのこだわり 〉
馬場:
耐久性と同じくらい大事なのが使用感、つまり、フィット感やボードのコントロールのしやすさなんですよね。
その中で、一番重要なのがソールのグリップ力だと思うんです。
スケボーって、足とくっついてないんですよ。
ジャンプした空中で、靴の摩擦力を使って板をコントロールするんですけど、体重が乗ってない時に摩擦させるので、グリップがすごく必要なんですよね。
あとスケートボードの技って、ほぼ9割失敗するんですよ。成功したらラッキーぐらいの感じで。
で、転んでボードから足が降りた時に、路面で足が滑ってしまうと怪我に繋がるんです。
ツルツルの路面でどれだけ機敏に動けるかっていうのも重要なんですよね。
そんな中で、いろんな素材を試してたどり着いたのが、このほぼ生ゴムのソールです。
これに関しては、僕の中で一才妥協しないで選びました。

北山:
馬場さんから出てくるグリップ力の要望は、安全靴だったらこの辺りというレベルを完全に超えていましたね。
通常、グリップ力の高いソールは、その減りや消耗も早いのが普通なんです。すり減ってグリップするわけですから。
グリップして減らないというのは、相反するところで非常に難しかったですね。
あと、安全靴は先芯が当たって痛いので、基本的に靴の形をワイドに作るのが主流なのですが、フィット感に優れた細身の形でこのソールを開発するのに苦戦して、実現出来る工場を5〜6社ぐらい変えましたね。
馬場:
自分が履いてきた靴は、グリップ力がかなり良い方だったのですが、それを超えるレベルを目指していたので、かなり厳しかったと思います。笑
僕はこれまで、ほぼ全てのブランドのスケシューを履いてきましたし、普段お客さんからも「どの靴のグリップが良い」とか、「どのブランドのスエードが強い」とかいろんな話を耳にします。
他の靴と比べてどれぐらいグリップがあるか。
スケートランプの斜面をどこまで登れるかとか、地面を強く蹴って走った時の食い付きとか。
サンプルをいくつも出していただいたのですが、全部履いて色々テストしましたね。
〈 結果、馬場さん史上一番強い靴に? 〉
馬場:
うん、それぐらい強かったですね。
グリップ力と耐久力。

〈 ワークのノウハウが活かせた部分は? 〉
北山:
耐久性やグリップ力は、ワークと精通していましたので、馬場さんの要望にすぐ対応出来る素材や工場の知識があったことは大きいですかね。
あとは業界的にコストを抑えるという部分にも慣れていたので、この価格でこのクオリティーの靴を作れたのは、これまで培ったワークの引き出しがあったからこそだと思いますね。
〈 ブランド名について 〉
北山:
すぐ覚えられるような、呼びやすい名前が良かったのと、
ヤゴとアント、偶然にも両方とも昆虫だねってことで、「バグ」という名前を採用しました。
馬場:
TryAntのイメージカラーがブルーだったのと、僕は音楽が好きで、ブルースとかブルーハーツがすごく好きなので、BLUEをつけて『BUG BLUE』になりました。
〈 どういったスタイルで履いてもらいたい? 〉
馬場:
もちろん、オールジャンルで全てのスケーターに履いてもらいたいというのが前提にありますが、『スタイリッシュな大人』をイメージしてデザインしました。
ドレスシューズじゃないですけど、スケートボードに乗っていない時でも、履いて出かける事が出来るようなスケートシューズ。
そういったイメージから、靴紐を2パターン選べるようにしています。
革靴のような細い紐を付属しましたが、これでスケートしても切れないですからね。
あとはそういう渋い大人のスタイルに憧れる子供達にも、ぜひ履いてもらいたいです。

本生産の製品は、シュータンのロゴマーク刺繍デザインが少し異なります。