メカニックマンとワークグローブ
Feature 03.
TryAnt が誇る「3D枝豆縫製」を元に誕生した、『EDAMAME MECHANIC GLOVE(エダマメ メカニックグローブ)』。
サーキットにおける作業性の向上を突き詰めたそれには、随所にわたりプロのメカニックマンの意見・要望が反映されている。
弊社代表 北山と、アドバイザーとして企画に携わったレーシングメンテナンスチーム『KIM International』金氏が語る、
アジアから世界に発信する、本格的メカニックグローブの開発秘話。
左 : 金 氏 / 右: 北山 氏
北山:
『EDAMAME MECHANIC GLOVE』は、そもそも日本のメカニックグローブの市場を見た時、アメリカ製や普通の軍手を使ってる人が多くて、「だったら日本一のメカニックグローブを作りたい」という想いから始まりました。
開発にあたり、プロのメカニックマンの意見を取り入れたこだわりの製品にしたいということで、金さんに相談し、まずはベースとなる「No.716 」というモデルを使い倒していただいて、「メカニックの視点から改善ポイントを教えてください」という形で始まったんですよね。
金 :
はい。
実際に現場で使わせていただいて、まず最初にリクエストしたのが、元々親指と人差し指の根元に付いていた補強パーツを、もっと伸ばしてほしいという点でした。
僕達の仕事って、常にいろんな工具はもちろん、尖った部品や熱い部品を扱うのですが、やはり親指と人差し指を一番使うんですよね。
その部分の消耗が特に早いので、人差し指の先まで補強出来るように伸ばしてもらいました。
北山 :
金さんのアドバイスを受けて、もう一つ大きく改良したのが、手の平のシリコンゴムですね。
金 :
「No.716」 は、シリコンが手の平一面に付いていて、すごくグリップ力が高いので、車業界じゃない人達にとっては良いと思うのですが、
僕達はグリップが効きすぎていても、かえって不便なんですよね。
というのもレースで使うタイヤって、一般のそれとは違い、ゴムがすごく柔らかくてハイグリップなんですよ。
そうすると、走った後のタイヤを素早く動かす時に、タイヤもグローブもグリップが効きすぎているので、タイヤにグローブがくっついて脱げちゃうんですよね。
あとは水やオイルが付く現場でもあるので、シリコンが多すぎると滑っちゃうという問題もあり、絶妙な量に改良してもらいました。
北山 :
それまでグリップが効きすぎて不便という発想はなかったので、金さんのお話を聞いて衝撃を受けましたし、”絶妙なシリコンの量”というのは、やはりメカニックの方に実際に使っていただいてアドバイスをもらわないと分からなかったですね。
金 :
僕の知る限り従来のメカニックグローブで、手の平にシリコンが付いてる物ってなかったのですが、シリコンが付いていると、一瞬熱い物が持てるんですよ。
サーキットでタイヤ交換する時って、タイヤの表面温度は70~80℃、加えてホイールはブレーキローターの400~500℃の熱が伝わってくるので、めちゃくちゃ熱いんですね。
普通だと触った瞬間に「アチッ!」てなるんですけど、シリコンが付いてると、100℃超えの物をパッと掴んで置くぐらいは出来るんですよね。
北山 :
よく軍手などに付いている黄色いボツボツは、PVCという塩化ビニールで出来ているのですが、あれは熱に弱くて一瞬で溶けちゃうんですよ。
その分、熱の伝達も早いので、熱い物は持てないですね。
シリコンだと、200℃までは溶けないという実験結果が出ているので、手への熱の伝達も少し遅いんですよね。
手首のマジックバンドが内側に付いていた方が良いというのも、金さんの案でしたね。
金 :
そうそう。
人って手袋を付ける時、手の平を内側に向けて付けるじゃないですか。
その時、内側にバンドがあった方が単純に着け易いのと、上にマジックがあると、エンジンルームや細い場所に手を入れた時、引っ掛かっちゃうんですよね。
そもそも枝豆縫製で、指に充分フィットしているので、僕は普段マジックがないスリッポンタイプを愛用しています。
あとこの汗拭き部分、めちゃくちゃ使ってますよ。
北山 :
おー、細かいこだわりを感じていただいて嬉しいですね。
サイド部分は、汗やスマホ画面が拭けるようにタオル生地にしているんです。
ちなみにメカニックの方達って、普段どれぐらいの頻度でグローブを使い潰すんですか?
金 :
そうですねえ、消耗が非常に激しいので、安価なグローブを使い捨てにする人も多いですが、これだと1~2ヶ月ぐらいは保ちますかね。
北山 :
アメリカ製のメカニックグローブもタフなんですが、指の太さがブカブカだったり長かったりで、アジア人にはサイズが合わないんですよね。
金 :
そうなんですよ。
その点このグローブは、指にしっかりフィットするし、シリコンも付いているから、ちょっとした小さな部品も拾いやすい。
僕も周りの人達に勧めるのですが、一度使ってみてまた使いたいという人が多いですよ。
KIM International
代表 : 金 敬模
『apr, ノバエンジニアリング等レーシングファクトリーにおいて現場実績を積み2014 年独立。
スーパー耐久、GR86/BRZ CUP 等車両製作、メンテナンス・チーム運営を行う。』